ICJのウェブサイト 👇
2022年2月27日、ウクライナがロシアをICJに提訴し、仮保全措置を要請するとゼレンスキー大統領がツイートした。
https://twitter.com/ZelenskyyUa/status/1497885721931268103?t=URh6HaP6N_s3T0Bselvddg&s=19
Ukraine Files ICJ Claim against Russia
28日未明(日本時間)、訴状と仮保全措置請求の内容がICJウェブサイトに掲載された。
→現在ICJに係争中である「資金供与防止条約および人種差別撤廃条約の適用事件」本案との関係性はどうなるか?
3月1日、米国国務省が本件に関して声明を発表した。
Considering the gravity of the crisis in Ukraine that has resulted from Russia’s unprovoked invasion, we trust the Court is taking into consideration the dire circumstances and rapidly unfolding events and hope that it will act with utmost urgency on Ukraine’s request for provisional measures.
3月2日、カナダ外務省も支持を表明した。具体的に何をするのかは不明。
2月27日、ラトビア外相は関連する国際裁判所への書類提出に協力する旨ツイートした。
3月1日、ラトビアは本訴訟でウクライナを「支援」することを決定したとツイートした。①共同原告となるのか、②第三国として訴訟参加する(ICJ規程62条・63条)のか、③訴外から非公式な法律支援等を行うにとどめるのかは現時点で不明(①の場合、既にウクライナ・ロシアを当事者とした手続が開始しているため、ラトビアがその当事者となるためには、ラトビアが新たに提訴し、その後に2つの手続を併合する手順を踏む必要がある)。
またラトビア外務省は、LaGrand事件でICJが行なった類の緊急の仮保全措置命令発出を勧奨した。
5月18日、ルーマニア外相が訴訟参加の意向を発表した。
5月20日、41カ国とEUが共同声明を発表し、訴訟参加の可能性も含めてウクライナの訴訟を支援する意思を表明した(ドイツ外務省)。日本(ジェノサイド条約非当事国)も含まれる。
訴訟参加国一覧
※HPとプレスリリース上の日付にズレがあるものがあります
訴訟参加手続
合同での訴訟参加をするべきか?
こうした状況で誰がロシアの弁護人を務めるのかが注目されていたところ、3月1日、UNCLOS附属書VII仲裁等でロシアの弁護人を務めたフランスの国際法学者Alain Pelletがロシアに辞表を提出したと発表した(2023年とあるが、2022年の間違いと思われる)。
他方、ウクライナ側弁護人はCovington法律事務所のチームがプロボノで務めているようである。イェール大学のHarold Hongju Koh教授とパリ第10大学のJean-Marc Thouvenin教授も加わっているとのこと。
2023年6月9日、裁判所が命令を下し、33カ国のうち米国を除く32カ国からの参加宣言の受理可能性を認めた。
I. INTRODUCTION (paras 1-4)
II. PRIMA FACIE JURISDICTION OF THE COURT (paras 5-11)
III. THE RIGHTS UKRAINE SEEKS TO PRESERVE (paras 12-16)
IV. THE RISK OF IRREPARABLE PREJUDICE AND URGENCY (paras 17-19)
V. THE MEASURES REQUESTED (para 20)
今岡奏帆「ウクライナ危機:国際司法裁判所への提訴」『東洋英和女学院大学:国際関係研究所World Commentary』No 43, 2 Mar. 2022
3月1日、裁判所は仮保全措置に関する口頭弁論手続を3月7-8日にハイブリッド形式で実施することを発表した。弁論はネット上で生中継される。
裁判長より以下の内容がロシアに通知された(規則74条4項)。
“I have the honour to refer to the Request for the indication of provisional measures filed in the proceedings instituted by Ukraine against the Russian Federation on 26 February 2022. Acting in conformity with Article 74, paragraph 4, of the Rules of Court, I hereby call the attention of the Russian Federation to the need to act in such a way as will enable any order the Court may make on the request for provisional measures to have its appropriate effects.”
3月7-8日に口頭弁論が開催されたが、ロシアは出廷せず、弁論は初日だけで終了し裁判所は評議に入った。3月9日、ロシア外務省は訴訟が「明らかにばかげている」ため不出廷を選択したと述べた。一方当事者の不参加は訴訟の進行を妨げない(ICJ規程53条)。
他方、ロシアが管轄権を争う書面をICJに提出していたようであり、それが3月7日付けでICJウェブサイトに掲載されている。全33頁だが、大半はプーチン演説の再掲で、本論は6頁。
ロシアによる反論の要点:
3月16日、ICJはロシアとウクライナに対し仮保全措置を命じた。
ICJ規程第41条2項に基づき、国連事務局長が安保理にICJ決定を通告している(S/2022/246)
ロシアが10月3日付で先決的抗弁を提出した(ICJ Twitter。なぜかプレスリリースはない。)
10月5日、ロシア外務省も、管轄権に関する先決的抗弁を提出したことを認めた(露外務省)。本件紛争は、ウクライナが管轄権の根拠とするジェノサイド条約に関するものではない(むしろ「特別軍事作戦」の国連憲章上の合法性とDNR/LNRの地位に関する紛争である)とする。
これにより、本案手続は停止される(ICJ規則79条の2 3項)。
本抗弁の提出は、仮保全措置手続には参加しなかったロシアが、先決的抗弁手続には参加してくる可能性を示唆する。裁判所は仮保全措置命令では「一応の管轄権」を認めたが、ロシアの抗弁を受けてそれを覆すかが注目される(その例として人種差別撤廃条約適用事件(ジョージア対ロシア))。
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