https://graphics.reuters.com/UKRAINE-CRISIS/GAS/gdpzynlxovw/

対露制裁の影響

3月1日、欧米等の制裁を受けて、独露を結ぶガスパイプラインNord Stream 2の運営会社Nord Stream 2 AGが破産手続を進めているとReuters通信が報じた。

Exclusive: Nord Stream 2 owner considers insolvency after sanctions

Nord Stream 2 AGはスイス法人で、ロシア国営企業Gazpromが過半数株主(51%)となっている

3月2日、Nord Stream 2 AGは破産申請の事実はなく、単に被用者との雇用契約の解除を現地当局に通知しただけだと発表した

We cannot confirm the media reports that Nord Stream 2 has filed for bankruptcy. The company only informed the local authorities that the company had to terminate contracts with employees following the recent geopolitical developments leading to the imposition of US sanctions on the company.

We can confirm that we have taken down this website due to serious and continuous attacks from outside.

Unfortunately, our mobile and fixed network lines are also not reachable – at least for the time being.

Nord Stream 2

とはいえ、Nord Stream 2が制裁の結果深刻な経営状態に置かれていることは確実であり、EUやその構成国との間で投資紛争に発展する可能性がある(既に、2019年に別件でEUに対してエネルギー憲章条約(ECT)に基づく投資条約仲裁が申し立てられている)。

3月1日、この既存の案件について、NordStream 2が銀行口座凍結による資金難のため仲裁の停止を要請し、被申立人EUはそれに原則反対している。仲裁廷は6月20日に手続会合を設ける(手続命令7号)。

ロシアはECTの暫定適用(ECT 45条1項)を終了する通知を2009年8月に行い、暫定適用は同10月に終了したが、ECTのうち投資に関する規定は、紛争処理条項も含め、既存の投資に関しては20年間適用が継続される(同b。e.g., Yukos Universal Ltd. v. Russia, PCA Case No. AA 227, Interim Award on Jurisdiction and Admissibility, 30 November 2009 (Fortier (chair), Poncet & Schwebel), para. 339)。ドイツ環境相が仲裁リスクに言及している(Welt(2月28日))。

2020年7月時点でのまとめはこちら↓

ロシア:米国制裁によって中断したNord Stream 2がデンマーク政府の建設許可により完成に向けて前進。当事者(露独)以外の第三者の思惑に振り回される同パイプラインの現状を読み解く

Nord Stream 1・2の破壊

https://en.wikipedia.org/wiki/2022_Nord_Stream_gas_leaks

https://en.wikipedia.org/wiki/2022_Nord_Stream_gas_leaks

2022年9月26日、デンマークのボーンホルム周辺海域の計4か所(デンマークのEEZ内で3か所、スウェーデンEEZ内で1か所)で爆発と見られる振動が観測され、Nord Stream 1および2から大規模なガス漏れが起きた。10月6日、スウェーデン政府は捜査の結果破壊工作の疑いが強まったと発表した(PR)。

各国声明

10月19日時点では、実行者が不明なためか法的評価について立ち入ったものは少ないようである。

関連する国際法規範

UNCLOS

武力不行使原則

武力紛争法

国際環境法