2月26日、フランス、チェコ、オランダ等はウクライナに武器武装を供与すると発表したと時事通信が報じた。同日、米国ブリンケン国務長官は3.5億ドル相当の武器類その他を供与すると発表したとテレグラフが伝えた。
Which countries are sending weapons and military aid to Ukraine?
EPF(欧州平和ファシリティ)は、2021年に理事会決定2021/509で設置されたEU予算外の基金で、共通外交安全保障政策(CFSP)のもとでの紛争予防や平和構築等のためのEUの政策に使用される(EU構成国が出資)。根拠法はEU条約21条2項・41条2項。
これを受けて、先んじて武器供与に方針変更したドイツ(2月26日)に加え、従来消極的だったスウェーデン(2月28日)も武器供与に踏み切ることを発表した。
3月8日、日本政府は防衛装備移転三原則の運用指針を改定し、防衛装備の海外移転を認め得る案件として「国際法違反の侵略を受けているウクライナに対して自衛隊法第116条の3の規定に基づき防衛大臣が譲渡する装備品等に含まれる防衛装備の海外移転」を追加した。
同日、林外相は駐日ウクライナ大使と供与のための交換公文を締結した(自衛隊法116条の3で求められる「国際約束」)。岸防衛大臣は小牧基地から航空機1機によるウクライナ近隣国(ポーランドのもよう)への輸送を命令した。
4月19日、防衛省は化学兵器防護マスクおよび防護衣とドローンの供与を決めたと発表した。官房長官は、ドローンは市販の民生品であり防衛装備には当たらないと説明。
4月21日、自民党高市政調会長は、物資積込み地として予定していたインドが、ウクライナ向け自衛隊輸送機の受入れを拒否したと述べた(時事通信)。
【2月27日 NHK】アメリカのブリンケン国務長官は26日に声明を出し、ウクライナに対して最大3億5000万ドル、日本円にしておよそ400億円の追加の軍事支援を行うと発表。声明では、ウクライナ軍がロシア側の装甲車両や軍用機などの脅威に対応するため殺傷力のある防衛兵器を供与するとしていて、アメリカ国防総省の高官は記者団に対し、供与される兵器には対戦車ミサイル「ジャベリン」も含まれることが明らかに。
【4月6日】上院が[Ukraine Democracy Defend Lend-Lease Act](https://www.govinfo.gov/app/details/BILLS-117s3522es#:~:text=An Act To provide enhanced,invasion%2C and for other purposes.)を採択。ウクライナへのより効率的な武器供与が可能となる。
【4月13日】榴弾砲と砲弾を含む8億ドル相当の武器供与を発表(Washington Post)。
3月9日、NATOのStoltenberg事務局長はCBN Newsの取材に対し、ロシアがNATO加盟国内のウクライナ補給線を攻撃した場合、NATO条約5条が発動されると述べた。
"There is a war going on in Ukraine and, of course, supply lines inside Ukraine can be attacked," he said.
"An attack on NATO territory, on NATO forces, NATO capabilities, that would be an attack on NATO."
4月9日、トルコによるドローン提供についてロシアが抗議したことが分かったと報道。トルコは、民間企業による販売であり、また戦争前に売却されていたと指摘(CNN)。
4月12日、米国その他武器供与国に対して外交径路を通じて正式に抗議をした(Washington Post)。
Russia accused the allies of violating “rigorous principles” governing the transfer of weapons to conflict zones, and of being oblivious to “the threat of high-precision weapons falling into the hands of radical nationalists, extremists and bandit forces in Ukraine.”
4月25日、駐米ロシア大使が米国に武器供与中止を求めたと発表した(Reuter)。
4月29日、外務省報道官がEU構成国等による武器供与が武器禁止条約の違反であると批判した(Tass)。
3月7日、ロシア国防省報道官は、ルーマニアなどを念頭に、ロシア攻撃のためにウクライナ空軍機の自国内での飛行や着陸を認めないよう求め、そうした協力を武力紛争への参加とみなし得ると述べた(Tass)。
4月13日、外務副大臣が、ウクライナ国内で武器等を輸送するNATO軍車列を「正当な軍事目標」とみなすと警告(Tass)。
4月24日に、スイスから輸入したスイス製弾薬(マルダー歩兵戦闘車用)のウクライナへの再輸出の許可をドイツがスイスに求めたが、スイス政府がそれを拒否した(Reuters; DW)。当局報道官は、スイスの中立義務と国内法上の要件によると説明。
DW - "Both of Germany's inquiries as to whether the ammunition received from Switzerland may be passed on to Ukraine were answered in the negative with reference to Swiss neutrality and the mandatory rejection criteria of the Swiss war material act," SECO media spokesman Michael Wüthrich told DW via email.
[...]
"Ukraine is involved in such a conflict with Russia. Therefore, since a war material export from Switzerland to Ukraine would not be eligible for an export licence, a lifting of the non-re-export obligation of the German Armed Forces in order to allow a transfer of previously received ammunition of Swiss origin to Ukraine is also ruled out," said Wüthrich.
英仏独等は2014年採択の武器貿易条約(ATT)の当事国であり、輸出した武器が国際人道法の違反等に用いられる等の一定の事由がある場合には武器の輸出を許可してはならない義務を負っている。(武器輸出それ自体を全面的に禁止する条約ではない。)
ATT当事国 Source: https://thearmstradetreaty.org/
ウクライナ軍に供与した武器がロシア軍の手に渡り、ウクライナに対して使用される可能性が指摘されている(CBC)
非交戦国による交戦国への武器・武装の供与は、伝統的な中立義務(のうちの避止義務)に違反する。
ハーグ海戦中立条約(1907年)6条 中立国ハ如何ナル名義ヲ以テスルヲ問ハス交戦国ニ対シ直接又ハ間接ニ軍艦、弾薬又ハ一切ノ軍用材料ヲ交付スルコトヲ得ス
もっとも、ICJの核兵器使用の合法性事件勧告的意見(1996年)によれば、中立法は「国連憲章の関連規定に従い」適用される(para. 89)。「国連憲章の関連規定」には、集団的自衛権について定める国連憲章51条も含まれる。→後述
侵略の被害国への武器供与は現在は(戦争違法化以降は)合法であるとの見解もある。
The Provision of Arms to the Victim of Armed Aggression: the Case of Ukraine
ニカラグア事件本案判決(1986年)で、ICJは非国際武力紛争が生じている他国内の叛徒への武器供与は当該他国に対する武力行使または武力による威嚇に該当する可能性がある(ただし武力攻撃には当たらない)と述べた。
[...] the Court does not believe that the concept of "armed attack" includes not only acts by armed bands where such acts occur on a significant scale but also assistance to rebels in the form of the provision of weapons or logistical or other support. Such assistance may be regarded as a threat or use of force, or amount to intervention in the internal or external affairs of other States. [...]
[...] In the view of the Court, while the arming and training of the contras can certainly be said to involve the threat or use of force against Nicaragua, this is not necessarily so in respect of all the assistance given by the United States Government. In particular, the Court considers that the mere supply of funds to the contras, while undoubtedly an act of intervention in the internal affairs of Nicaragua, as will be explained below, does not in itself amount to a use of force.
他方、類推的に、国際武力紛争の紛争当事国の一方への武器供与も、他方当事国に対する武力行使に当たるのかは一見したところ明らかではない(例えば、松山健二「他国軍隊の敵対行為への支援の国際法上の評価」『レフェレンス』783号(2016年)35頁)。他国への武器供与は原則として合法であることを示唆する国家実行があるとの学説もある。
いずれにせよ、仮に武力行使に当たるとしても本件ではウクライナのための集団的自衛として正当化される可能性がある。EU理事会の「共通の立場」2008/944/CFSP(2008年)は、「国連憲章が承認する自衛権に従い、国家には自衛の手段を移転する権利がある」(前文8項)とする。
他方、ロシア側への武器供与は、ロシアの侵攻が侵略に当たる場合、侵略への共謀(complicity)として国際違法行為を構成する可能性がある(国家責任条文16条)
Art. 16 A State which aids or assists another State in the commission of an internationally wrongful act by the latter is internationally responsible for doing so if: (a) that State does so with knowledge of the circumstances of the internationally wrongful act; and (b) the act would be internationally wrongful if committed by that State.
Articulating Arms Control Law in the EU's Lethal Military Assistance to Ukraine